冬を迎えて久しい季節の小島(こじま)にまたやってきた朝。 静かに揺らいでは溜まる水面(みなも)と豊かな自然の息吹のさえずり、瀬戸内(せとうち)の小さな島の朝。 海の生業(なりわい)をもってその日々を営む民が民々の多くを占めるその島の朝は、いつもと同じようにか、人の姿もまばらで、静かにたたずんでいた。 ―島の集落、水面を見据えるところの民家の集まる漁村(ぎょそん)。 風澄むこの季節のいでたちで、学びの時を送る児(こ)のいでたちで、少女はひとり、島にこの朝のひとときを過ごしていた。 ところはやわらかな朝焼けの照らす海辺の小路。 ―それは登校(とうこう)の道。その先に待っているのは、島にただひとつの学び舎―小学校(しょうがっこう)。 歩みを進めて、その足をとめて、溜まり揺れる波をふと眺めて。 今日の日の始まりを見る穏やかな陽の光が昇ってゆくとき―少女の送るいつもの今日がまたそこに始まろうとしていた。
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