いくつもの大地を股に掛けて広がる遥かなるユーラシア大陸の西方のはずれは欧州(おうしゅう―よーろっぱ)。そのうちの更に西のはずれにあり、海峡の向こうにブリテン(独:Britannien/仏:Britain)の島を見据える北海(ほっかい―独:Nordsee/仏:Mer du Nord/蘭:Noordzee)のゆらぎを西に湛えるベルギー(独:Belgien/仏:Belgique/蘭:België)は、ここ西欧のベネルクス(Benelux)の一国たる小国にて、ブリュッセル(仏:Bruxelles/独:Brüssel/蘭:Brussel)という名の都市をその首都に据えている。 この国のほど中央部に位置し、北大西洋条約機構(きたたいせいようじょうやくきこう―NATO)や欧州連合(おうしゅうれんごう―EU)の本部をはじめ数多の国際機関、そして様々の国立による文化施設の並ぶ王都、ブリュッセル。 この街にあって広くその名を知らしめるのが『悪童ジュリアン(Juliaanske)』―通称『小便小僧(しょうべんこぞう―Manneken Pis/独:Männeken Pis)』の像である。『ジュリアン坊や』という愛称で親しまれているこの像は、実に中世と言われる時代からここにその歴史を刻んできたことで、この街の最長老市民と称えられ、街の名高い広場―グラン=プラス(La Grand-Place de Bruxelles)に聳える街の市庁舎の裏手にあって、今もその時を刻む。[1][3] この像の近くにもうひとつ、人知れずたたずむ像がある。
正式名称、ジャンネケ・ピス(Jeanneke Pis―独:Janneken Pis)―通称『小便少女(しょうべんしょうじょ)』である。 ところは市庁舎の裏手に位置する通りから伸びる路地の奥の一角。
デニス・ドブリエ(Denis Debouvrie)なる彫刻家の手により西暦のもとの1985年に製作され、その2年後にあたる1987年に癌(がん―独:Krebs/仏:Cancer/蘭:Kanker)とエイズ(独蘭:Aids/仏:SIDA)の撲滅を念じて設置されしというこの像たる少女は、石灰石(せっかいせき)の作りにして投函(とうかん)の受け入れ口をも兼ね、そこからの収益をかかる病を患った者たちに施すという。[1][2][4] 放尿(ほうにょう)。なぜか全裸(ぜんら)―素っ裸にして、いわゆる"おしっこ座り"の姿態をあらわにしながら、その股(また)の間のワレメから水―おしっこ―を放出。それはあまりにリアルに過ぎることから『素直に笑えぬ』―賛否両論ともいう、少女(しょうじょ―独:Mädchen/仏:Fille/蘭:Meisje)の恍惚(こうこつ)の表情を活き活きと示す。[1][5]内陸の地の王都に置かれた少女の喜びの様の像。これからも人知れずこの街の路地にその時を刻み、街のどこかを見据えながらあり続けるのであろうか。 うつろいのなかに、旅の者たちのざわめきの傍に、今日も静かに。資料
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