|
卯月(うづき)へのうつろいの時を迎えようとする花見月(はなみづき)に晴れた京の町は、遠いところから、海の向こうから、それぞれの国からこの平安の古都の華を見にひいて味わいに訪れる観光の者達の歩みを受け入れていた。 そうした者達のあしどりを傍に、町角に咲いた花簪(はなかんざし)。 白粉(おしろい)を余りあるほどに塗ったほんのり桃色の面に引き立ちましたは鮮烈な紅(べに)の唇、幼きながらもたまゆらに見せた矜持は祇園(ぎおん)の幼女(をんな)の舞いなり。 舞台は街路か、花園の庭か、古刹の伽藍か。いずれもよしや。 花舞う空のもとにその背を垂れまします太舞妓(ふとまいこ)の魂や、薫りゆらしたこの花月(かげつ)。
|