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潮の香りを乗せてやってきて、吹き抜けては返してゆくあたたかな風は、内海に浮かぶ数多の島々に弥生(やよい)の季節の訪れを伝えていた。 直島(なおしま)―瀬戸内海(せとないかい)の離島の町に、またやってきたは春の日。家々のあいなかを通り抜けてゆく路地の隅っこに、並んで揺れる真紅のランドセルが、桜の季節の日ざしをかえして輝く。通う学校の制服を歩み揺らしてスカートひらり、今日の日の下校の路をゆくゆく小学生の女の子。 瀬戸内(せとうち)の遥かなる航路のさなか。それは古来からここに幾度も繰り返されてきたろう営み、いつかのここに生を送っていった少女たちと同じように、今日の日を終えてすずろの想いを胸に、うちに帰ってゆくのだ。
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