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黒海(こっかい―Чёрное море)から北極海(ほっきょくかい―Северный Ледовитый океан)から太平洋(たいへいよう―Тихий океан)から日本海(にほんかい―Японское море)まで―それぞれの方位にいくつもの海を見据えながらに欧亜(おうあ―)の大陸の北に遥かなる国土を横たえるロシア(Россия)の冬季は人肌に凍てつく。 大地の西のはずれに位置するかの連邦の首都―モスクワ(Москва)。十月(Октябрь)に入り、いよいよと風の凍えも本格のものとなりゆく頃・・・変わらず佇む市街。ゆく人もまばらの街路に響き渡るその穏やかな弦(げん―Струна)の音色は、そこにひとりで弓(ゆみ―Смычок)を動かす少女(しょうじょ―Девочка)の奏でるしらべであった。 足もとに置いて開いた入れ物―それさり気なくルーブル(Рубль)のおねだり。日に日に寒さを増しゆてく・・・そんな時節のさなかで弾き奏でるヴァイオリン(Скрипка)の音色を背後に、ちらりと見た瞳の奥に想うはなにを。 王都の滅びの哀しみの影をたたえもする街がなずみゆく冬。それぞれの生きる今日の日を―そこに営む少女の影をたたえつつ。 ―『いいからはやくいれろよ』
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