|
霊妙にゆらぐ水面(みなも)のうちに、遥か太古の代から連綿と続く長い歴史を湛える明媚なる海、瀬戸内海(せとないかい)。 阿賀(あが)という名の港町は、その海原のふちにある数多の港町のうちのひとつで、広島(ひろしま)の地の南方の端、呉(くれ)の市域の下の手にある。 東広島から呉の町を貫流して着く二級河川、黒瀬川(くろせ-)。流れ入るその河口を傍に据え、休山(やすみ-)の小峰をうしろ手に据え、伊予松山(いよまつやま)の堀江(ほりえ)の港から来る往来の船を迎える。 古くからの港町である阿賀には、宮島(みやじま)の世に名のある宮―厳島神社(いつくしま-)の祭礼に係る、御漕船(おこぎぶね)のならわしがある。元禄の時代(1688-1703年)に始まったものというこの祭礼は、昭和の時代(1926-1989年)の末の頃から呉市の無形文化財に列せられ、往時のこの地の民の息吹を、連なる今の日に伝えている。 ひとつの季節の終わりの頃と、始まりの頃を伝える夕陽、夕焼けの赤を映して沈んだ水面は、たまゆらに凪ぎに流れるひととき。ゆき交う船々の影を小脇に見据える港の村落の日没、過ぎたいつかの夕陽が小山の向こうに落ちてゆく。
|