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海原に影揺らぐ民の列島に息づく八洲(やしま)はその東北の地にあり、太平洋(たいへいよう)の遥かなる水面を常世のうちに見据える岩手(いわて)は三陸(さんりく)―田老(たろう)の磯辺に、風なだらかな葉月(はづき)の朝が訪れる。 民世のたたずむ陸の地に入り込み、迫る港の影を映し返しながら揺れる田老湾。その北の外れに置き連ねられた陸中海岸国立公園(りくちゅう-)のうちの一角にたたずむ三つの奇岩(きがん)は、三王岩(さんのういわ―山王岩)という名で今の世の民に知られる。 今の代に生きる者の想像も及ぶことなき深遠の彼方―白亜紀(はくあき)という古の時代から、そこに打ち寄せては返してゆく白妙の波とささやく風によって形作られてきた三王岩は、古来よりそこに優美なる景勝をたたえる名所としての名を馳せる。 雄に聳える男岩を波間に据え、その傍らに、太鼓(たいこ)の姿をした太鼓岩、そして女岩を携えて、悠遠の昔からそこにあり近く浦見る浅瀬に静かにたたずむ。 ―霧(きり)に覆われた雲海(うんかい)のごとき霞(かすみ)の端に浮遊する夏(なつ)の夜明けの三王岩に、見据える水平線の彼方から日の出の輝きが訪れる。 今や何人たりとも見ることかなわぬ白亜紀の代の記憶を秘めるかのように、そして連綿とそこに過ぎてきた遥かなる時の追憶を秘めるかのように―。 霊妙の波のゆらぎに孤影を映しながらまた今日の日を、―そして明日の日を見据えつつ。
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